さかな・サカナ・さかな Part4 〜湖釣り編〜 (平成24年1月22日)
 
 さて、やって来ました、この気節。氷上ワカサギ釣りシーズンの始まりです。私たちはいつも
桧原湖の早稲沢 という場所に行きます。ドーム船が二つくらいあって、いつもその回りに無数のカラフルなテントが
張られて、氷の上に花が咲いたよう。少し離れたところから入るポイントは、もっとたくさんの車が止められるので
ものすごいテント村ができます。

 今年は、氷が張るのが少し早くて、去年より一週間〜10日ほど早く全面結氷して解禁。昨年、3月12日に
一緒に行く約束をしていた
人と、約一年ぶりの再開です。彼が参加できて心から嬉しかった。旦那の職場の同僚だった
人で、毎年一緒に行く仲間なのだけど、おととし、福島市から浜通り地区に転勤したので、昨シーズンはさすがに来ない
だろうと思ってたら、毎週やってきたというツワモノ。

 海まで数分のところにアパートがある。という話だったので、津波被害をまっ先に心配したけれど、少し高台だったのか、
幸い自宅アパートの被害は皆無という連絡がとれた後、音信不通状態のままだった。年末にやっと「氷が張ったら行き
ましょう」という連絡がとれたくらいで、震災から年末まで、ほぼ無休状態だったそうだ。

 彼との再開もそうだけど、氷上釣りが出来たことも何より嬉しいことだった。ご存知のとおり、桧原湖ワカサギからは
暫定基準値以下だけど、セシウムが検出されている。はたしてどうなるんだろう・・・と思っていた。でも、漁協だって
大切な収入源である。昨シーズンは、暖冬でだんだん氷が張らなくなって氷上釣りが出来なくなるんじゃないかと
能天気な心配だったけど、今シーズンは切実な心配だ。現に、「行きたいけど・・・・」と二の足を踏んでいる人も多い。

 そういえば、数年前に一度だけ解禁した 羽鳥湖 の近くを通ったら、水が殆どなくて驚いた。どうやら地震により
下の田畑に送水する送水路が破壊されてしまったらしく、調査のため三分の二ほどの水を抜いたが、手つかずに近い
状態で、農家が大変困っているようだ。
 
 とにかく1月21日(土)に、私たちは確かに早稲沢のいつもの場所に立ち、いつものようにテントを張り、いつものように
釣りを開始した。のだけど。なんと回りに誰もいなかった。ドーム船にお客さんが少しいたようだけど、テントが全くない。
なぜ!?と思っていたら、おかしいほど釣れた。ここ数年、ワカサギ釣りがブームみたいになってからこんなこと本当に
なかった。「今まで人が多すぎたんだよ〜」と言いながら、静かな釣りを楽しんだ。

 途中でおじさんが二人、テントに顔を出して、「どお?」と聞かれて、「こっちのは大きいなぁ、もう、飽きちゃって
あちこち穴あけしてるんだ。」と言って去って行った。私たちより30mくらい岸よりにテントがあるみたいだが、
釣れすぎて飽きたのか、釣れなくて飽きたのか、はわからない。


 浜通りの彼の、震災後の話は強烈だった。まず震災翌日、富岡へ状況を見に行かされている最中に原発が爆発。
原町の事務所から、「帰ってくるな」と連絡が入り、「飯舘方面へ抜けろ」「三春方面へ変更」「いわきへ抜けろ」と
司令はどんどん変化し、まる二日間殆ど眠らずさ迷い続け、ようやっと事務所へ戻ったとのこと。その間、何が
どうなっていたのか話しても話しきれないんだと思う。それから事務所で出た「支給食」の塩結びが涙が出るほど
美味しかったとのこと。

 その後は被害の大きかった新地町へ数日行ったようだが、そこは既に地元の方たちの炊き出しが始まっていて、
塩結びどころじゃないあったかいご馳走があり、自衛隊の活躍がすごくて感謝、そして噂に聞く自衛隊カレーの
美味しかったこと・・・。事務所も家も「外へ出るな」と言われたが動かなくてはならないのでマスクに極力肌の露出
させない姿で動いたこと、「40歳以上の男性に限る特殊任務」と言われて第一原発すぐ近くの現場に、夏の盛りに
防護服で入ったこと。緊急地震速報が出ればすぐ詰めなくてはならない、「当番」のこと。

 ガソリンが中通りよりも切実に入らなかったこと。今もまだ、スーパーなどの再開が進まず、24時間営業の
コンビニなんてなく、まだまだ不便な状況で、釣り具屋はみんな閉まっているので、仕掛けなどを用意することが
できず、「確か入漁券買う店に売ってたよな!?」と、出てきたそうである。

 私のいる中通り地区は、比較的早くそういうものは復活した。今は殆ど影響は残ってない。ただ、線量は
彼のいる浜通りよりよほど高い。そのことの混乱が残る。そんな話はどこまでもやまず、3人で「まるで
今日は3月12日で、その間の約一年ってのはなかったような気がするくらい、記憶が飛んでる」と話した。

 もちろん、旦那も私も地震後の状況が凄まじかったのは事実だが、直接的に被害の大きかった人と話すのは
また違う。地震一ヶ月後に東北支店の人と話しているが、業務の内容が彼の場合、地震被害直結なので、
また凄い。

 そうして彼はその日はうちに泊まり、「何ヶ月ぶりに」8時間もぐっすりと眠って帰って行った。心地よい疲れと、
彼の中で「釣れた数」の最高記録達成に満足したのだと思う。良かった、本当に良かった。

 ※彼は、県の土木建築関連のお仕事をしている人である。