マタギと太極拳 (2014.12.6UP)
よもやま話に書きたいと思うことはネタはたくさんあるけれど、なんだか書き始めることが
できず、まだ今年は一個も書いてない。ちょっと書いてみるか、と筆を取ってみた。
思えば、今年は先生が引退し、新しい先生に師事することになり、32式剣も始まり、講習会にも
できるだけ参加するようにしてたので、旦那いわく「太極拳に夢中」な日々だった。けれど、旦那を
放っておいたワケではないので、あしからず。
太極拳に引けをとらず機会が増えた「釣り」。その中でも急激な成長(?)を見せてる渓流釣りだけど、
今年は「マタギに始まりマタギで終わった」感じ。何度かよもやま話で出ているけれど、マンガ家の
矢口高雄好きの影響で、マタギには少なからず興味がある(親子の不思議 Part2参照)。
福島県にもマタギの文化はあって、南会津地方で出してる冊子にそのことが載っていた。主に
「マタギ」と呼ぶのは、秋田・山形・福島あたりらしい。鉄砲撃ちのプロであるこの人たちが、随分と
戊辰戦争の際に活躍したそうだ。南会津は激しい戦闘の舞台になってるし、ずっと北上して函館
戦争へ向かう最中には山形・秋田なども巻き込まれてるだろう。
『又鬼の涙』・矢口高雄著は、そんな
時代のマタギの悲劇を描いている。
GWの前半、かねてより行きたかった阿仁マタギ・打当温泉へ行った。ここで、現役マタギの鈴木さん
の「マタギ語り」というのがあるので、申し込んで聞いてみた。とてもお話し好きの方で、私たちが
ちゃんとマタギについて予備知識を持ってお話に臨んでるのを喜んでくれた様で話は弾んだ。
映画「マタギ(1982年1月25日公開、主演:西村 晃)」の撮影にも協力していて、故・西村
晃さんが
高級車を運転してやってきたこと、角館あたり?に出たのか、小指を立てて「コレと遊んで来たよ」
と笑っていたこと、そこに居るだけですごい迫力があったことなど、どんどん話が出てくる。一時間の
予定を大幅に過ぎても話は止まらず、仕舞いには旅館の方が「まだ食事に来ない客がいる」と呼びに
来て、語りが無理やり終わりになってしまった。
お礼を言って別れ、食堂「シカリ」へ移動する途中で玄関を出る鈴木さんを見かけた。その、去っていく
背中の名残惜しそうな様子といったら・・・。後で旅館の人に聞いたところ、割といつもそうらしい。話し
始めると長いので、食事前にマタギ語りを聞く客がいると聞くと、食堂係の人はゲンナリするそうだ。
6時半から来る客のためにお膳を並べたら、7時を回っても来ないのだから。もっとも、暖かいものは後で
火を入れるようになっているのでお客としては大問題ではないが、係としては心配に違いない。ところで
食堂の名、「シカリ」とは山に入る時のマタギの隠語で、隊長とか親方といったところになる。鈴木さんの
祖父が辰五郎さんという名シカリだったそうだ。
旅館の食事は、夜も朝も美味しかった。残念ながら、熊鍋を頼んではなかったので、ウサギ鍋だった
けど、鈴木さんの話を聞いたので、ぜひ熊食べてみたいと思う。あとは、マスなどの淡水魚の刺身と、
蕨などの山のモノが並ぶ。量も適度だ。海の近くの、海産物満載の料理は豪華さと量の多さが売りに
なることも多いが、こちらは良い意味で質素な中に工夫がされているといった印象。そして何より、ご飯が
美味しい。とりわけ、朝食べた白米と味噌汁は「これぞ日本の朝食」という味だった。
お風呂も良い。男性側にはイタズ(熊)型オブジェの口からお湯が流れ、女性側はバンドリ(むささび)
と思われる物の口から流れ出ている。湯船も広くて湯加減も申し分なく、いつまでも入ってられるような
お湯だ。窓も大きく開放的で、夜はよく見えなかったが朝入ったときには、正面に山と川、側面に田んぼが
広がっているのが見えた。この日は天気が良く、まだほんの少し淡さを残したような陽光がそれらの景色
を惜しみなく照らし出していて、梅がそろそろ咲くか?と浮き足立つような気持ちにさせる。そうして湯船
に使っていると、時間が実にゆっくりと流れていく。
ここの売りはマタギなのであって、当然のように「資料館」が併設されている。銃が何丁かと銃弾、
弾を造る為の道具、薬莢入れ、そういったものや「ワラダ」という投げて使用する狩りの道具や衣装なども
展示されていた。惜しむらくは、銃の名前と年式が入っているともっと良かった(他の展示場でもほぼ
入っていない)。たぶん火縄や単発式村田銃だろうと思うのだが、できるならその銃の特性や射程距離が
表示されてると嬉しい。獲物をいかに射程距離ぎりぎりまで引き付け、一発で仕留めることができるかが
重要問題なのであり、それは館内に展示されている志茂田景樹著:黄色い牙 の引用文からもよくわかる
し、マンガや小説などでも、しばしばその部分がクライマックスになるからだ。
私が読んだ物の中では、漫画では矢口高雄『マタギ列伝』、小説は 隆 慶一郎『死ぬここと見つけたり』
が良かった。前者は単発式村田銃で熊を、後者は火縄銃を使用して猪を撃ち取るシーンがそれにあたるが、
獲物を見つけて仕留めるまでの描写のゾクゾク感は何とも言えない。マタギ列伝の方は題名どおりマタギ
そのものを描いたものだが、死ぬこと・・・の方は戦国の動乱が落ち着いた、江戸時代に入って間もない
頃の時代が舞台で鍋島勝茂を主君とした「葉隠」精神を持つ3人の佐賀鍋島武士たちの物語だ。猪を
撃つのは主人公の齋藤杢之助である。この男の動きが何となくマタギの三四郎を彷彿とさせる気がする。
ある大雨の夜に山へ出かけて大猪を仕留めるシーン、子供が生まれた時にどうしていいか解らず困惑
するシーン、生まれた息子のために熊を捕りに行く時の獣の足跡の読み方、娘のために花を採りに崖を
おりる身のこなしの軽さなどが何となく似ている。また、杢之助を慕う牛島萬右衛門は、肩に大猿を乗せて
歩く男で、この猿とは絶対の信頼関係で結ばれている。それは三四郎が故あって鷹匠となり、苦心の末に
手なづけた若鷹「阿仁丸」との関係や、釣りキチ三平の「夜鳴き谷の怪物」でダム建設に反対する銀二
おじさんと猿の三平を連想させるのだ。もしかして隆さんは矢口高雄のファン??と思ったけど真実は
わからない。
この小説で、杢之助は火縄の他に馬上銃という小さめの銃や遠町筒という遠くを撃てる銃など、いろんな
ものを使用する。佐賀藩は、この頃から鉄砲を取り入れており、武士全員に訓練を施していたのだ。なるほど
幕末に「一番近代化された藩」として、武器の保有数が一番だったり、アームストロング砲があったり、
スペンサー銃を大量に仕入れてたり、反射炉があったりする訳だ。なお、杢之助の父は、訓練の命に背いて
「このじじいに今更何をやらすか!」と一喝してあさっての方向に鉄砲を打ちまくった人間である。困った
指南役がそれを上司に報告すると、上司は、指南役の方を処分した。「人を見よ(誰でも彼でも訓練して
どうするんだ)」ということらしい。
それゆえか、どちらかというと銃での戦いが多いが、剣も出てくる。娘の静は銃ではなく剣の師範級の
使い手、息子の熊之助は銃を得意として育つ。静の剣の腕前が元で、決闘事件まで巻き起こる。
ここは剣の勝負だし、萬右衛門は槍が得意だ。これを読んだのはちょうど32式剣を習い始めて間もない頃
で、それによりますます剣がおもしろくなり、時代小説にハマり、時代劇にハマって剣がおもしろくなり、
そのうち槍なども見てみたいなぁという意欲に変わっていった(ちょっと大げさか?)
好みだと思うが、そちらに比べると前述の黄色い牙の主人公はちょっとヘロヘロ君に見えて、迫力に
かける。志茂田さんは、雄雄しい武士道的感覚よりも弱さを持った人間的感覚を表現したのだろう。
現役マタギの鈴木さんの話しにあったが、ライフル銃で撃つと、銃弾がはじけて花びら状に広がって
しまうため肉の価値が落ちる。丸弾で一発で仕留めたものが一番良いということなので、それでは
どれがライフルでどれが散弾銃で何が違うのか、展示してある弾はどの銃に使う弾なのかetc、
知りたいことは山のようにある。でもさすがにそこまでやるとマニアックすぎるか・・・
この阿仁マタギには、熊牧場があって、いつもの年だとGWには春に生まれた仔熊と触れ合える
イベントをやるそうなので楽しみにしていた。が、今年は原因不明の「メス熊大量死」により、仔熊が
産まれなかった。でも一頭だけ、去年産まれたという熊(まだ幼い)がいて、これが愛嬌のあるヤツで、
触らせてもらうことができた。
野生の熊は、3歳まで親子で行動するそうだ。3歳になると、親熊は仔熊を置き去りにする。これを
「野いちご落とし」と言って、熊にとっての重要な儀式となる。この野いちご落としも必ず成功する訳では
ないようだ。運悪く敵に遭ってしまったり食べ物をうまく採る事が出来ずに、命を落とす熊もいるのだろう。
熊牧場の熊というと、可愛いおねだりポーズで「エサくれ〜」攻撃をするのが有名だが、ここの熊も
例に漏れずやってくれた。上手に口に入れる熊もいれば、足元に転がってそれに気づかない熊もいて
面白い。どうも、彼らは視力は弱いらしい。たまたま来ていた写真が趣味の自称・熊牧場通のオジサンが、
年齢別に分かれて飼育されている熊たちの、どこに可愛い熊がいるとか、愛想いいのがいるとか、
そんな情報を非常に詳細に説明してくれたので、熊がたくさんいるだけと言えばその通りの、けして
大きい訳ではない施設に1時間ほど居たろうか?それでも飽きることはなかった。
なお、この熊牧場では2013年の「人身事故」により閉鎖した秋田八幡平クマ牧場からヒグマを
引き取るために、立派な「クマ舎」を建設していた。確か7月末頃オープンしたと聞いた。
阿仁マタギ駅には、角館から秋田内陸縦貫鉄道に乗って行く。普段は1両編成の電車が走る
鉄道マニアには有名な路線らしい。途中に秋田県内最長(5,697m)の十二段トンネルという、前に
入り口後ろに出口と、両方とも見ることができる(つまりまっすぐ)ところやカタクリの群生地など、車掌さん
のガイドがついていて、見所では速度を落としてくれるというサービスがある。ちなみに車掌さんの名が
「草gさん」だった。確か、山形・秋田の県境あたりにこの名前が多い地域があると聞いたことがある。
SMAPの草gさんも元々のルーツがそっちなのでは?と言っている方がいたのを思い出した。
前九年の役の際に、弓で草をなぎ払って先導した和泉三郎の子・小太郎に源義家が与えた苗字
が発祥らしい。なぎ払う。32式剣の「イト歩横掃」の動き、だ。前に何かの番組で「草を刈る競技」を見た
ことがある。この競技は、大きな鎌を使って何uかの草原を刈っていき、その速さと美しさを競うもの
だった。この鎌を使うのに、遠心力を利用する。それは手ではなく、腰で回すことで最大の力を引き出す。
そう、それがイト歩横掃の動きなのだ。剣に振り回されちゃいけない。
私は鉄道にはあまり詳しくないが、鉄道好きの小学生の男の子や、鉄道マニアぽい男の人などが
乗っていたが、乗客はそう多くはない。ローカル線、という感じ満載だ。1日目は角館から鷹巣方面へ
走るので、町場から離れて、だんだん山が近づいてきて、山の中に入る。ちょっと集落が出てきたら
阿仁マタギ駅だ。もっと先の阿仁合の方へ行くと、渓谷にかかる橋の上を走ったりして、さらにすごい
景色を楽しめるようだ。鉄道好きの人たちはきっと鷹巣まで行くのだろう。
話が前後してるが、こうして私は阿仁マタギに入り、話を聞いて、資料を見て、熊に会って来た。
念願、叶ったり。2日目は角館の武家屋敷見物となる。その話はまた後で。。。
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